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そしてハンスは、自分の握るレヴォルツを見た。
「な!?」
それは想像すらしていなかった事態だった。レヴォルツの刀身に――亀裂が、ヒビが入っていたのだ。
まさか、ありえないことだ。
マナによる強化を得た魔装武器そのものが破壊されてしまうなど――。
「そうか――」
そこで理解した。なぜ、マナをまとって強化していたはずのレヴォルツ本体に、ダメージが及んでしまったのか――。
今のレヴォルツは、マナの付加を示す光が消えていたのだ。すっかりと消えてしまっている。それでは鍛えているとはいえ、ただの金属にすぎない。
魔法無力化を使われたのだ――。
不覚というしかない。
まとっていたマナを剥がされた。刃と刃がぶつかるその瞬間に。
だから、ただの鈍らに成り下がったレヴォルツは、エルヴェルのうねる剣の威力に、その硬度に、切れ味に、耐えられなかったのだ。オリハルコン製の超硬度の剣に。
さっきルカが武器を落としたのは、そういうことか――?
ようやく納得した。
あれはルカが瞬時に判断し、魔槍が破壊されるのを防いだのかもしれない。
「くそっ――」
もはや下がるしかない。このまま振り続けていたら、間違いなくレヴォルツは折れてしまう。
それだけは避けたかった。師から託された剣を再起不能にしてしまうことに躊躇があった。
まさか、レヴォルツが――。
破壊された衝撃だけではなく、長らく愛用し続けてきただけに、精神的なショックもないといえば嘘になる。
この戦場の緊張感が、否応なしにそれを幾分和らげているにすぎないのだ。
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