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大丈夫なのか?
いくらマナの力を借りるといえども、魔弾の発射は当然身体的な疲労も伴うものだ。
あれほどに連射すれば、それはいわば全力疾走を長時間続けるようなもので、長く体力が続かないのは明白だ。
ならばここで決められる勝算が彼女にはあるのか。
さすがにそれだけの魔弾の嵐を受けると、エルヴェルも回避はしきれないだろう。
「はっ!」
そこで一つの魔弾が消滅した。魔法無力化だ。そのまま次々と、赤い光が消されていく。
やはりエルヴェルには、魔法無力化の制限がないらしい。となれば訓練しだいでは、自分もそうなることができるのか――。
そこで何か、おかしな音がした。柔らかいものをえぐるようなそれだった。いや――その前に、銃声があった。
魔弾を撃つときの独特の高音とは違う、胸に衝撃が響くような、鉛の弾を放つ銃声だった。
新たな敵襲か――?
ハンスは周囲を見渡して、体勢を整えた。けれど、それらしい姿は見当たらない。
いや、見えないからと油断はできない。建物の上かもしれない。
「あ……あ……だん――?」
が、それよりも先に――目の前のエルヴェルが、ばったりと前に受け身も取らずに倒れた。その瞬間が、目の端に映ったのだ。
エルヴェルが倒れた?
なぜ――?
反射的にエルヴェルを見る。
その直後から、地面に赤い模様が広がっていく。エルヴェルは、もがき動こうとするが、身体が痙攣するように震えていて、自由が利かないようだった。
撃たれたのか!?
しかも、銃弾に――。
ハンスはすぐにあたりを見渡した。しかしやはり、銃を構える人間の姿は見えない。そもそも、鉄の銃弾を放つ銃器を使うのはゼノビア兵のはず。
なぜ、味方であるエルヴェルが、鉄の銃弾に狙われなければならない?
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