三章 『AL作戦』

42/82

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/310ページ
 大丈夫なのか?  いくらマナの力を借りるといえども、魔弾の発射は当然身体的な疲労も伴うものだ。  あれほどに連射すれば、それはいわば全力疾走を長時間続けるようなもので、長く体力が続かないのは明白だ。  ならばここで決められる勝算が彼女にはあるのか。  さすがにそれだけの魔弾の嵐を受けると、エルヴェルも回避はしきれないだろう。 「はっ!」  そこで一つの魔弾が消滅した。魔法無力化だ。そのまま次々と、赤い光が消されていく。  やはりエルヴェルには、魔法無力化の制限がないらしい。となれば訓練しだいでは、自分もそうなることができるのか――。  そこで何か、おかしな音がした。柔らかいものをえぐるようなそれだった。いや――その前に、銃声があった。  魔弾を撃つときの独特の高音とは違う、胸に衝撃が響くような、鉛の弾を放つ銃声だった。  新たな敵襲か――?  ハンスは周囲を見渡して、体勢を整えた。けれど、それらしい姿は見当たらない。  いや、見えないからと油断はできない。建物の上かもしれない。 「あ……あ……だん――?」  が、それよりも先に――目の前のエルヴェルが、ばったりと前に受け身も取らずに倒れた。その瞬間が、目の端に映ったのだ。  エルヴェルが倒れた?  なぜ――?  反射的にエルヴェルを見る。  その直後から、地面に赤い模様が広がっていく。エルヴェルは、もがき動こうとするが、身体が痙攣するように震えていて、自由が利かないようだった。  撃たれたのか!?  しかも、銃弾に――。  ハンスはすぐにあたりを見渡した。しかしやはり、銃を構える人間の姿は見えない。そもそも、鉄の銃弾を放つ銃器を使うのはゼノビア兵のはず。  なぜ、味方であるエルヴェルが、鉄の銃弾に狙われなければならない?
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加