三章 『AL作戦』

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 エルヴェルは、どうやら首筋だけでなく、頭の一部にも銃弾を受けていたらしい。  頭のほうは直撃ではないようだが、どちらも急所だ。彼の命が長くないことはすぐに察することができた。  「その可能性を……考慮できなかったのは……無念だ……。だが……ゼノビア軍の勝利は絶対――。俺は、こことは違う世界に……行く……が……その世界で……ゼノビアの勝利を見届けるとしよう……」  すでに声も掠れている。終わりは近い。 「ええ、そうするといいわ。もっともそれは、ゼノビアの勝利ではないけれどね」  シェイラは魔構機銃をかまえた。エルヴェルは瞳を閉じた。  ハンスもまた、瞼を下ろした。エルヴェルへの敬意の意味を込めて。  独特の高音が響きわたった。今度は銃弾ではなく、魔弾だった。ハンスは目を開いた。エルヴェルが再び動くことはなかった。  何度見ても、いたたまれない光景だった。たとえそれが、敵の兵士だとしても――。 「さあ、とっとと行くわよ。この戦いのメインディッシュをいただくためにね」  シェイラは表情一つ変えずにいった。  いや、なんなら少し、薄く笑みを作っていたくらいだ。  それこそ、慈悲という感情などないかのように。つい五秒前に、人間の命を絶った者とは思えない。  むしろ本当に、感情と呼ばれるものが、彼女には存在しないのかもしれない。人間としての感情を封印して、ただ合理的に、明瞭白日に、アルディスの勝利のためだけに行動している。  シェイラという人間――いや、彼女はブレイバーだ。  ここは皮肉などではなく敬意を込めて、彼女は人間ではないと、そういうことにする。  シェイラは人間ではなく、アルディス軍のブレイバーであり、一つの兵器なのだ。
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