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「その剣じゃ、今後の戦いは無理かな? どうするの?」
シェイラは試すような目をする。
「それは引き返すか、ということですか?」
「ええ。はっきりいうなら、そういうことよ。心配しなくても、さすがに戦力として使えないからって、殺したりはしないわ。そこまではあたしも考えていない」
思わず鳥肌がたちそうな台詞だった。愛想笑いさえも浮かべるのが難しいくらいに。
そこまでは考えていない、というが、じゃあ何を考えているのかと問いたくなる。しかしそれを訊くことには嫌な予感しかない。
けれどどうやら、冷酷すぎるシェイラにも、一パーセントくらいの慈悲の感情はあったらしい。
「――行きますよ。仮にこの剣が折れたらなら、その場に落ちている武器を取って戦えばいいですから。最悪はゼノビアの銃だろうが……。――そういうことでしょ」
ハンスがいうと、シェイラは軽く笑みを浮かべる。その本心は読めない。
「ふうん。――ま、その気概はブレイバーとしては立派ね。ハンスくん自身が決めたことだもの、それでいいというなら、あたしは止めはしない」
それは暗に、決断の責任はその本人にあると、そう通達されているようなものでもあった。
それならそれでかまわない。戦場に立つ以上、生きるも死ぬも自分しだいだ。覚悟はできている。
「では、乗り込みましょう。あたしたちの主戦場に」
シェイラは息をつくこともなく、足を動かした。
「ハンス。最悪はちゃんと逃げろよ?」
ルカもそういって笑みを作り、すぐにシェイラを追いかけた。
まったく――頭のおかしなヤツらだ。
悪口ではなく、本当に。
改めて、亀裂の入ったレヴォルツを見た。たぶんこの分だと、まともにぶつかれるのは後数回だろう。
気を引き締めて進むしかない――。
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