三章 『AL作戦』

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 ハンスも足を進めた。  数メートル程行った、そのときだった――。  偶然のことだろうか、それはわからない。けれど、その瞬間に急激に、背後に気配を感じたのだ。  ハンスは直感的に振り返っていた。その視線の先に、人間の姿があった。  黒の装束のような姿の人物が、瞬間だったのだ。 「お前……は……?」  黒の外套をまとった姿だが、しかしブレイバーパラディンではない。しかし、ゼノビアの白の軍服とも違っている。そのどちらにも適合しない、謎の漆黒の服装に身を包んでいる。 「誰だ? ――その男をどうする?」  ようやくハンスの問いかけが届いたのか、その人物はこちらを向いた。どうやら男だ――。  しかしわかったことはそれだけで、素性や身分はまるで不明だった。  ハンスの質問に、男は答えない。 「もう死んでるんだぞ?」  見たところ、武器を所持している気配もない。  こんな戦場で、遺体を丁重に扱っている余裕などないはずだ。  仮に男がゼノビア兵であっても。負傷者と死人は見捨てるのが戦場の基本だ。冷酷な思想を持つゼノビアなら、なおさらそのはずだった。  男は踵を返そうとする。 「待て!」  ハンスは無意識のうちに、レヴォルツを構えていた。斬りかかろうかというところで、男は顔をこちらに向けた。  ゆらゆらと首を振る。 「やめておけ。その剣では無理だ」  その通りだった。しかし――。 「こちらも貴様に手を出すつもりはない。私の任はただ、だからな」  たしかに攻撃の意思はないらしい。ハンスもレヴォルツの構えを解放する。
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