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ゼノビアの自走兵器は、もはや敵と味方を選別できているのか怪しい程に、傍若無人に破壊を尽くしていた。瓦礫の山をものともせずに街を蹂躙している。
十メートル近くもあるその巨体に取っては、人間の兵士など虫ケラ同然なのだろう。
ゼノビア軍が、国の勝利を優先するためにいかなる犠牲をも厭わない思想を持っていることから、もはや味方もろともこのアルデウトシティを壊滅させようと目論んでいるのかもしれない。
すでに焼け野原に近い惨状になった道路を、瓦礫の影に隠れながら進む。
とはいえ、ハンスの武器ではまともに戦えない。刀身に亀裂が入っていることを踏まえると、自走兵器に対しては、自分は無力といい切って差し支えない。
「さて、ここから決勝戦ね」
自走兵器を前にしても、シェイラは明るくいう。そんな状況とはとてもいえないが。
あの後、何とかはぐれることなく、シェイラとルカに追いつくことができた。
ただ、あの『ヴァルキリー』と名乗った謎の人物については、まだ話せていない。
唐突にそんな話をされても、二人も困惑するだろうし、何よりそういう状況でもなかった。
「ま、ハンスくんは、そこらへんで適当に歩兵狩りでもしてなさいな」
ずいぶんとぞんざいないいかただった。信頼されていないのか期待されていないのか、そのどちらともなのか。
武器を失ったハンスとしては、何もいい返す言葉はない。せめて自分の持ち場ではベストを尽くすくらいしか、軍に報いる方法はない。
そしてシェイラは、挑戦的な眼差しを今度はルカへと向けた。
「で、ルカくんは――どうするのかな? ついてくるの? ――あたしに」
やけに重い口調でいう。
まるで人生の重大な決断を迫るかのように――。
いや、そうなのかもしれない。その通りなのかもしれない。
人生の重大な決断なのだ。この戦いは。
ここから先は死亡率の跳ね上がる死地へと乗り込むのだ。生半可な覚悟では彼女のパートナーは勤まらないと、シェイラは示唆しているのだろう。
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