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「オレは――」
言葉が切れる。
一瞬だけ、ルカが逡巡したかのように見えた。
珍しい――。
ルカが迷うなどという姿は、普段は絶対に見られない。
何ごとに対しても、彼は彼自身の絶対的な思想と結論を準備している。自分の進む道を、自身の中にある哲学を疑ったりはしない。
そういう印象をハンスは持っている。
やはり、夢の存在がそうさせるのだろうか――?
夢を持つルカだからこそ、ここで命を張ることに躊躇があるのだろうか。
たっぷり五秒をほどの時間を過ごした後に、ルカは勇ましく表情を引き締めた。
「オレは――行きますよ! もちろん。目的のために……どこへでも……どんなところへでも。そして勝利を掴む!」
「……ルカ?」
彼にしては珍しく、やけに熱のこもった宣言だった。
どちらかというと、どこか冷めていて、のらりくらりとしながら要領よくやっている印象が強かっただけに、それには驚かされた。
「ははは、悪い。――らしくなかったか……」
「あ、いや」
この緊迫感ならば、そうさせても不思議ではない。必然的に力も入るというものだ。
ここを突破できるか否か――要するに自走兵器を破壊して、このアルデウトシティを奪還できるかどうかで、アルディスの命運は大きく変化するのだから。
「よろしい。それなら、迷わず行きましょう。あたしたちの戦いにね……」
シェイラとルカが、巨大な自走兵器に向かっていった。けれど、ハンスは足を進めない。
自分は自分で、やれることをやるだけだ――。
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