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ただ、武器を落とした相手にやられるつもりはなかった。
休まず攻撃を仕掛ける。仮に別の武器を所持していたにしろ、それを抜くには一手が必要となる。その隙さえも与えない――。
最終的に、男を壁際まで追い詰めた。胸のあたりに打撃を加えて、気絶させた。
それ以上の所業は――やはり憚られた。
無意識のうちに、という条件つきであれば、開戦後には何人もの命を奪ってきたことだろう。しかしこうやって、無力となった相手の命をわざわざ奪うという行為には、どうしても躊躇が生まれる。
結果として、ハンスはレヴォルツで、男の両脚の腱を切断した。これでもう、戦線復帰はできない。それで十分だ――。
血が湧き出す様をまじまじと見ていると、何やら頭がくらくらとしてくる。直視しないほうがいいだろう。
男の軍服を漁ってみる。最後の護身用だろうか、小型のナイフが見つかった。とりあえずこれでも、持っておくに越したことはない。
もう一つ、小型の拳銃を見つけた。ミーアの魔構機銃よりも、さらに一回り小さいくらいのサイズだ。
使用した経験はないが、使い方くらいは知識として持っていた。これも万一のため、懐に忍ばせておくことにした。
それにしても――ゼノビアの戦力も相当削られているようすだ。
この男が単独だったことも、それを物語っている。激戦で隊が乱れている証拠だろう。ハンスが今、こうしているように――。
さっさと決着をつけなければ、泥仕合が長引いていくだけだ。
自走兵器を目指しながら進んだ。
結局のところ、勝利に貢献するには、その周辺の敵兵を片付けていくべきなのだ。
その暴れっぷりが幸いしてというべきか、周辺の建物は大半が大破している。だから、目標を捕捉することには、何一つ苦労はなかった。
建物の隙間から見えている、灰色の巨大なボディを目指して前進するだけだった。
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