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敵は次々とやってくる。一度見つかった以上、もう逃げることはできないだろう。
戦争が始まって以来、もう何度目になるかもわからない、白兵戦だった。こうして生き残ってこられたのは、運の要素も大きいだろう。
運も実力のうちというのはそういうことだ――。
数分――いや数十分か、とにかくキリのない戦闘が続いた。長引けば長引くほど、体力的にも厳しくなってくる。
そんなときに、ついにその瞬間は訪れてしまった。
ゼノビア兵の不利を察知したのだろうか。
それはわからないが、ついに自走兵器の主砲が、そのエネルギーの蓄積を始めたのだ。
青白いような光が、右の腕に備え付けられた、巨大なシリンダーの先から漏れ出している。
つい先日のあの戦いを思い出して、思わず身震いをしてしまう程だった。とにかくあの主砲だけは、人間がどうこうできるレベルを逸脱した兵器なのだ。殺人兵器なのだ――。
「アルディス軍全員退避いぃっ! 主砲がくるぞおおっ!」
誰かの声が上がる。
アルディス軍だけではない。ゼノビア兵たちも、被害を逃れるために散り散りになっていく。
それだけを見ると、滑稽な映像にすら思えた。先程まで武器をぶつけていた相手と一緒になって、逃げるというのは。しかも、それは自軍の兵器からなのだ。
しかしながら、退避しながらも交戦は少なからず続いている。その光景がまた、滑稽なものに思えてくるが、そんな悠長なことはいっていられない。
ハンスもまた、退避行動に移った。移りながら、同時にユキのことを思い出した。
ユキはどうしている?
逃げ切れるのか?
パラディンといえども、まともに受ければ生きてはいられない。あの主砲はそういう武器だ。
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