三章 『AL作戦』

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「大丈夫か?」  無視もできず、声をかけた。 「ああ、問題ない」  どこかぞんざいな応答をされた。格下のナイト軍服だったからかもしれない。  意識はしっかりしている。大丈夫なようだ。本人がいうのだから、それ以上の深入りはしないことにした。  何より、ユキだ。  ハンスは走った。ゼノビア兵に遭遇した場合は――気絶させた。そして脚の腱を切った。  とりあえずの処置だ。そんな行動にすら、虚しさを感じてくる。どこか作業的に人間を傷つけている自分が、滑稽な存在のように思えてきた。  自分はいったい何者なのだ?  ここで何をしているのだ、と。  いや、自我を失っている場合ではない。優先順位を考えろ――。  今は、ユキだ。  茶色の世界を走り、何人ものブレイバーたちとすれ違った。無事である者、負傷してしまった者、そして命を奪われてしまった者まで――。  感傷に浸ってはならないと、自らに語りかけた。負傷者にはハンスにできるだけの応急手当を、死者は無視をした――。心の中でだけ、手のひらを合わせた。  そしてついに――ユキを見つけた。  瓦礫の中に埋もれるようにして、しかしその中で座るような体勢になっていたユキを、ハンスは見つけた。  身体が僅かに動いていた。意識を失ってはいないようだ。ただ、重いものに挟まれているのかもしれない――。 「ユキ!」  呼びかけながら、近づいていく。 「えっ……」  ユキは弾かれるように首を左右に動かした。そして、こちらを向いたところで止まった。 「――ハンス……?」  驚いた表情だった。同時に、その顔には疲労が滲み出てもいた。少なからずダメージを受けているのだろう。  まさかすぐそばにいたとは、想像もしていなかったようすだ。
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