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「あの兵器を、か……」
同時に、にわかには想像もつかない、というのも本音だった。
神の力を得ているとはいえ、外見の上では若い女性にしか見えない彼女が、あの兵器を単独で破壊できたということが。
「けど同時に、その街も消滅した……」
囁くように、ユキが告げる。聞き漏らしてしまいそうだった。
「えっ――?」
「レジーナ様の持つ力は……私たちの想像をはるかに越えているから。ここが彼女の戦場になれば、私たちは……すぐに退避することになる」
「だから、離脱か」
ハンスを逃がそうだとか、そういう意味ではなく、アルディス軍としての撤退だ。その指示が、そう遠くないうちに発令されるのだろう。
とはいえ、正式な指示がない段階で、勝手にその行動をとってもいいのだろうか――。
そのとき――近くでアラームのような機械音が鳴った。
すると即座に、ユキがポケットの中で何かを操作した。右の耳に掌を当てる。どうやら髪の毛の下には無線機を装着しているようだ。
通信はすぐに終わった。事務的な口調で、ユキはいった。
「退避命令が出ました」
「……アルディス軍からか」
「うん。神徒レジーナ様がこの街にやってくる。最後の兵器を破壊するために……」
神妙な面持ちでユキは告げた。
その直後に、頭のはるか上のほうから破裂音がした。視線を飛ばすと、赤い光が上空で弾けたのが見えた。
あれは――合図だ。
アルディス軍からの――。
「撤退です!」
ユキが事務的に宣言した。
「レジーナ様が来ます」
「じゃあ、二機目の自走兵器も破壊し終えたということか――」
つまり、ゼノビアの所有する自走兵器は、目の前にいるコイツが最後ということになる。ルカも予想していたが、本当に形勢逆転ができそうな様相を呈してきた。
あとはもう、神徒レジーナに命運を託すしかない――。
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