三章 『AL作戦』

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「あの兵器を、か……」  同時に、にわかには想像もつかない、というのも本音だった。  神の力を得ているとはいえ、外見の上では若い女性にしか見えない彼女が、あの兵器を単独で破壊できたということが。 「けど同時に、その街も消滅した……」  囁くように、ユキが告げる。聞き漏らしてしまいそうだった。 「えっ――?」 「レジーナ様の持つ力は……私たちの想像をはるかに越えているから。ここが彼女の戦場になれば、私たちは……すぐに退避することになる」 「だから、離脱か」  ハンスを逃がそうだとか、そういう意味ではなく、アルディス軍としての撤退だ。その指示が、そう遠くないうちに発令されるのだろう。  とはいえ、正式な指示がない段階で、勝手にその行動をとってもいいのだろうか――。  そのとき――近くでアラームのような機械音が鳴った。  すると即座に、ユキがポケットの中で何かを操作した。右の耳に掌を当てる。どうやら髪の毛の下には無線機を装着しているようだ。  通信はすぐに終わった。事務的な口調で、ユキはいった。 「退避命令が出ました」 「……アルディス軍からか」 「うん。神徒レジーナ様がこの街にやってくる。最後の兵器を破壊するために……」  神妙な面持ちでユキは告げた。  その直後に、頭のはるか上のほうから破裂音がした。視線を飛ばすと、赤い光が上空で弾けたのが見えた。  あれは――合図だ。  アルディス軍からの――。 「撤退です!」  ユキが事務的に宣言した。 「レジーナ様が来ます」 「じゃあ、二機目の自走兵器も破壊し終えたということか――」  つまり、ゼノビアの所有する自走兵器は、目の前にいるコイツが最後ということになる。ルカも予想していたが、本当に形勢逆転ができそうな様相を呈してきた。  あとはもう、神徒レジーナに命運を託すしかない――。
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