三章 『AL作戦』

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 最悪は先に行ってもらうしかない。  そう考えると――嫌な想像が脳裏に浮かんだ。  この街にはたくさんの負傷者がいるのだ。動けなくなった負傷者は、逃げることさえもままならない。彼らは皆、神徒レジーナの起こす戦火の犠牲になるということだ。  戦場では負傷者は切り捨てろ――。  人命を尊重し優先するアルディス軍ですら、この教えは存在している。だから、自分だけ逃げることが間違いではない。  やむを得ないことなのだ。  致し方ないことなのだ。  むしろハンスのほうが、アルディス軍の教えに背いている。それでも――ユキだけは、見捨てられない。  頭の中でさまざまなシチュエーションを想定するが、あまり良いイメージは浮かばなかった。とにかく時間がないのだ。  すると突然、付近のどこかで爆発音がした。わずかに風の流れが乱れたのがわかった。 「レジーナ様……」  ユキが呟く。彼女は首を大きく後ろに向けて、上空に視線を飛ばしていた。  ハンスもつられて顔を上げた。  そして、目を疑った。二、三度瞬きを繰り返した。  それでも見間違いなどではなかった。  その視線の先に、人間が浮遊していたのだ。白い服装に身を包んでいることだけはわかった。  あの軍服には覚えがある――。  出陣前に会話を交わした、レジーナのそれだった。  しかし、あのときに比べると、だいぶ破損が目立つ姿となっていた。神徒といえども、やはりゼノビアの兵器相手では、難なくとはいかないようだ。  レジーナの正面に、赤色の丸い光が現れた。その光はぐんぐんと大きくなり、レジーナ本人の身長をも越える巨大な円へと膨張する。  その光が、自走兵器に向かって放たれた。
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