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衝突と同時に爆音が鳴り響き、生温い突風が吹きつけられ、砂のつぶてが彼女のいる方向から飛んでくる。
さらには、大地が大きく振動した。足を止めなければならないほどだ。
ノアが勇んでいる。そう思った。
ノアが戦いを欲しているかのようだ。
「やっぱりハンスだけでも逃げて!」
ユキは声を大きくした。レジーナの戦いを肌で感じたのだろう。そう思わせるには、今の衝撃一つで十分だった。
「このままじゃ、ハンスも巻き込まれる!」
「そんなこと――できるかよ!」
ハンスは逆に、腕に力を込めた。ユキの身体を離さないように。
強がりではなく、本当に、この状況を打破しようと考えている。
「わかって、ハンスっ。このままじゃ二人とも……」
そこで言葉を切ったのは、その先に続く悪い予感を振り払うためだろう。口にしてしまうと、本当にそうなってしまいそうだからだ。
「最悪、それでいい……。そうなってもいい。ユキを見捨てたなんて罪を背負ったまま俺だけ生きるなんて、そんな拷問を俺に強いる気かよ?」
「それは――」
ユキは苦々しい表情を作った。こちらの心中も、察してくれているのだろう。
それでもまだ納得していないようだったが、やがて深く頷いた。
「わかったよ、ハンス。――ごめんね。迷惑をかけます」
最後だけは、やけにへりくだった物言いだった。でも、ユキにかけられる迷惑ならば、むしろ喜ばしいくらいだ。
別に変な意味などなく、下心もなく、本当にそう思える。
レジーナと自走兵器の戦いは激しさを増し始めていた。爆音と地鳴りは続いている。吹き抜ける風も、だんだんと熱を帯びていた。それを背中で感じ続けながら、地道に足を進めた。
ようやくユキの肩を支えながらの移動にも慣れてきて、ここから本格的に進み始めようというところで、だんだんと二人の方向へ近づいてくる足音を聞いた。
敵襲か――。
そう思って即座に背後を警戒したが、やってきたのは灰色の軍服を着た、アルディスの男性ブレイバーだった。軍服のデザインからして同じナイトのようだが、面識はない。
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