三章 『AL作戦』

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 自己責任――。  たしかにそうだ。  彼の主張は間違ってはいない。一人を助けようとして結果二人とも命を落とせば、アルディス軍にとって不利益となる。  こういう局面になって初めて、ミーアやシェイラの主張する、戦場での立ち振舞いの、本当の意味が理解できたような気がする。  戦場では仲間を助けるべきではない――。  だからこそ、自己責任なのだ。  こうしてユキを助けるという決断をしたのは自分自身で、ならばその先に起こるかもしれないいくつかの結末は、いずれも潔く受け入れるべきなのだろう。それが自分自身の選択なのだから。 「あーあ、ハンス。はっきりいわれちゃったねー」  少し小馬鹿にしたような、ユキの声だった。こんなときなのに、ちょっと可笑しくなった。 「なんだよ。ユキまで。ユキも俺のこと、半端者だとか思ってんのかよ」 「ううん。そんなことないよ。……ヒーローだと思ってる」  ユキはそういった。 「昔と同じで、ずっと変わらずに、ハンスは私のヒーロー」 「それはちょっと、いいすぎかもしれないけどな……」  瓦礫だらけで、見通しのよくなった街のあちこちにちらほらと、撤退するブレイバーたちの姿が見えた。それぞれが一心不乱に、レジーナの戦闘ポイントから離れる方向に進んでいる。  そんな同僚のブレイバーたちに声をかけるのも躊躇われた。彼らは軍の指示に忠実に従っているだけなのだ。  先ほどのブレイバーナイトの彼がいったように、仲間を助けて撤退が遅れるのは、自己責任の範疇になる。  いや、自己責任で済めばいい。  場合によっては懲罰もあり得る――。  撤退するブレイバーたちの姿がほとんど見えなくなった。  レジーナの戦いは激しさを増しているようで、背後からは相変わらず、爆音と突風と衝撃と発光が同時に襲いかかってきていた。
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