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「ふふ、驚きましたか? 嬉しいものですね。あなたのような若い女の子にそういわれると」
「そんな……」
若いなんて――。
いいかえるなら、幼いというだけだ。拙いというだけだ。足りないものが多すぎるだけだ。
「ただ、未熟というだけです……」
それに対して、レジーナは何もいわない。その通りだという判断をされたのだろうか。
それも仕方のないことだ。自分の倍近くも生きていて、何倍もの時間をアルディス軍に捧げてきたレジーナと自分には、雲泥の差があってしかるべきなのだ。
「ではレジーナ様は、二十五歳で神徒に――?」
彼女が神徒に就任したのは九年前だったはずだ。
「そうですね。ブレイバーで約十二年間、神徒で九年間――二十一年間、アルディス軍とともに歩んできたのですね」
まるで他人の来歴を表するかのように、レジーナはいった。自分自身をどこか遠くから客観的に見つめるような、別の世界から眺めているかのような、そんな印象すら受けた。
「長い長い人生ですね……」
そういったレジーナの心中は読めなかった。
たしかに三十四年は長い年月であるが、人生全体でいえば、まだ半分くらいのものである。
レジーナが長い人生と語ったのは、これまでの三十四年のことなのか、それとも、これからも続いていく、未来へつながる人生のことなのだろうか――。
「いえ、まだまだ、これからだと思います……。これからも、続いていきますから。レジーナ様も、私も、アルディスも――」
「ふふ、その通りですね」
少し生意気をいってしまったかと思ったが、レジーナは微笑を浮かべてくれた。
どこか寂しそうでもある、微笑を――。
「これからも続く未来を、私も信じていきたいものです……」
するとレジーナは、ユキの横を通りすぎ、会議室の入り口へと歩いて行く。
「じゃあ、ごめんなさいね。片付けの邪魔をしてしまって」
「あ、いえ、こちらこそっ。お話ありがとうございました!」
ユキはまた、頭を深々と下げた。
そこにレジーナの声が届いた。
「パラディン、ユキ。『首都防衛AL作戦』での、あなたの健闘を祈っています」
そして、レジーナは部屋を去った。
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