三章 『AL作戦』

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「ハンスも私も、まだ死にません! 最後まで諦めない……逃げ出さない……泣き出さない……弱音を吐かない! ――全部が――私に教えてくれたことだからっ――!」  感情的になるユキを見るのは、不思議な感覚だった。上司ともいえるシェイラ相手であれば、なおさらだ。  いや、それよりも――、とは誰のことだ? 「ああ、それって」  まるで馬鹿にしたように、シェイラは言葉を吐き出す。 「もしかして、彼女のこと? ずいぶんとあなたに入れ込んでた、あのね」  お人好し――?  おそらく、ハンスの知らない人物のことだということは、予想がついた。 「そんなひと言で語れるものではありません! あの人が残してきたことは――」 「でも、」  冷たい声が割り込んだ。 「――あれだけの力がありながら、真のブレイバーになりきれなかったのよ。甘かったからね、」 「あの人を侮辱することはっ」  ユキは叫ぶ。声が裏返って掠れた。 「シェイラさんでも許しません!」  ユキの大声――しかも激昂した大声というのを、初めて聞いたかもしれない。動けなくとも、ユキは並々ならぬ殺気を放っていた。  まさしくそれは、ブレイバーパラディンでなければ発することのできない、強者だけが持つ雰囲気だった。  彼女の味方であるハンスですら、プレッシャーを感じるほどだ。 「ふふふ。そんな、熱くならないでよね。目が怖いわよ? ――で、それが答えでいいのね? あたしの質問の答えにはなってないけど」  意地悪く、見下したように、シェイラはいう。答えなど出せないとわかっていながら、無理難題を強いてくる。  そして沈黙が訪れた。  遠くで神徒レジーナが戦っているであろう轟音だけが、重々しく胸の中に響いてくる。
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