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その弱く脆くなった部分に、高濃度のマナを流そうとするがために、素材の金属が破壊しかかっているのだ。このまま続けると長くは持たないかもしれない。
しかし、そういっている場合ではなさそうだ。
「うおあぁぁっ! 逃がさんぞおっ! 魔人どもめがああぁぁっ! 死ねぇえぇ」
鈍器を手にした兵士が襲いかかってくる。
「仕方ない」
マナの付加を再開した。異音は大きくなるが、もう忘れることにする。
「であっっ!」
レヴォルツを振る。
鈍器とレヴォルツがぶつかって、衝撃が伝わってきた。
その感触も、やはり普段のものとはわずかに違っている。何が違うのかといえば説明しがたいが、微妙に剣自体ブレているのだ。
「邪魔をするなっ!」
鈍器を振り払う。
「死んでろっ!」
レヴォルツを突き出す――が、かわされてしまった。
冷静さを欠いていることが自分でもわかる。人に対して、死んでろなどと口走ったのは、いつ以来だろうか――。
「ヒャっはは! おめぇだよ、それはぁ! 逃がさん! 逃がさねぇ」
男は一心不乱に鈍器を振り回してくる。もはやそれは、武術というべきそれではなかった。しかし当たれば命の危険がある。
一気に決めたほうがよさそうだ。
ハンスはレヴォルツにさらにマナを付加させるべく力を込めた。破損しないようにここまで力を抑えていたが、それよりも戦いを終わらせるべきだ。
レヴォルツが悲鳴を上げた。
「ああっ!」
男の鈍器を目指してレヴォルツを振るった。
派手な金属音が鳴り響いて、男は獲物を取り落とした。大地に転がった鈍器は二つに分断された。
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