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あとは――。
「けっ!」
舌打ちをしながらも、男は次の瞬間には、悪意に満ちた笑みをこぼした。
「ならこの身体で相手してやるよぉお!」
叫びながら迫ってくる。まったくの丸腰だった。拳を振り上げているだけにすぎない。ついには悪あがきか。
「終わりだ!」
男が迫ってくるタイミングに合わせるようにして、ハンスはレヴォルツを横一線に凪いだ。
が――。
その途中で、鈍い衝撃に襲われた。何か固いものを切ろうとしたような。
男が右腕で、レヴォルツの振りを受け止めていた。ふつう、マナをまとった魔装武器を生身で受けられるはずはない。ということは――。
「残念だったなぁ! オリハルコンの小手だぜ」
「くっ!」
同時に、レヴォルツの刀身部分から、パラパラと破片がこぼれ落ちた。限界か――!
「だあっ!」
男か腕を使ってレヴォルツを打ち払う。
その瞬間に――急激に腕が軽くなった。負荷が少なくなった。空気抵抗の感覚も変わっていた。
それで半分、いやほとんどは理解ができていた。視線をレヴォルツに送ったのは、その残ったわずかな可能性をこの目で見て排除するためだった。
レヴォルツの上から三分の一が消失していた。鋭さが消え去って、ギザギザとした無造作な先端部から、金属の欠片がボロボロと落ちていた。
ついにやられたか――。
いや、感傷に浸っている場合ではないのだ。
「死ねぇえぇっ!」
男が迫ってくる。ハンスは身構えた。
が――。
その瞬間に、赤色の何かが宙に飛散した。と同時に、肌に水滴が付着した感覚があった。
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