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「うん……だけど……」
ユキの表情が再び歪む。
「足が……痛むか――」
しかし不運はそれだけでは終わらない。
そのタイミングで、唐突に大地が激しく揺れた。瓦礫の一部が空中に舞い上がったのが見えた。
続くようにして身体を動かされてしまうような、強烈な突風が大地を襲った。
思わず身体を小さくした。でなければ、本当に吹き飛ばされてしまうような恐怖感があった。それほどに急激な風圧の変化だった。
そして風が温かくなった。いや、だんだんとそれは、熱量を増していって、やがて熱さを感じるほどになる。
その熱さは数十秒の間続いて、やがてだんだんと生温い風へと戻っていった。
ハンスは顔を上げた。
少し離れた場所で濁った煙が立ち上っていた。石の破片や土や砂を巻き上げているのだ。
「まさか……主砲を放ったのか」
自走兵器も、本気の様相を呈しているようだ。
レジーナは大丈夫なのだろうか。化神といえども、あれをまともに浴びれば無事ではいられないのではないかと思う。
が、他人の心配をしていられる状況でもないか――。
そう思ったときに、上空からとてつもなく激しい光が降り注いできた。それは赤なのか緑なのか黄色なのか、それもわからないくらいの、いわば太陽の光にも劣らないほどのまばゆい輝きだった。
その光が、上空でどんどんと大きく広がっていくのが見える。見えるが直視はできない。そんなことをすれば瞳が焼かれてしまいそうだった。
すべてを飲み込むような強烈な光――。
それはたとえるなら、小さな太陽がその場に作り上げられているかのようだった。
今がもしも夜だったなら、その闇を吹き飛ばして夜を明けさせてしまったのかもしれない。それぐらいの、形容しがたい光の量だった。
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