三章 『AL作戦』

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 とにかく光の正体がわからずとも、それがとてつもない量のエネルギーの塊だということくらいはハンスにもわかった。 「やっぱり、ハンスだけでも逃げて……」  眩しさに目を細めながら、その光る物体に視線をやるユキがいった。 「あれは――」 「大丈夫さ……」  いやきっと、もう大丈夫ではないのだろう。  そろそろ本当に、諦めるときなのだ。 「もう……遅いよ。そうなんだろ?」  あれが何なのか、どんな能力なのかは、わからない。  けれど、そのエネルギーが放出され、それに飲み込まれれば、間違いなく生きてはいられないという確信がある。  ユキは何もいうことなく、ハンスの胸に身体を埋めた。それに対してほとんど反射的に、ユキの身体を抱き寄せた。これが最後というのなら、ここが戦場であることを忘れるくらいは許されるだろう。 「すごい魔法だね」  ハンスの胸の中で、ユキは呟いた。 「――あれって、魔法なのか?」  ユキは顔を上げた。とてつもない光量のせいで、ユキの肌が白く見える。 「たぶんそう。魔研が開発した禁術の類いじゃないかな」 「禁術か――」  禁術といえば、シャーロットの話していた究極魔法がすぐに連想された。  完成はまだだとシャーロットはいっていたが、それ以外にも、この戦争に備えた類似の魔法を開発していても不思議ではない。 「究極魔法『ラグナロク』」  聞き逃すことができない単語だった。 「『ラグナロク』!? あれが!? でも、まだ未完成のはずじゃ――」  いや、あのとき、シャーロットが、たしか――。 「うん。実用化って意味ではね。けど、シミュレーション実験はたしか、もう行われているはずだから、おおよその試算はデータとして出てたはずだよ。あとは、実際に発動したときのデータだけ――」 「じゃあ、あれが……例の試作型ってことか」  そうだ。シャーロットがいっていた。 『試作型ラグナロク』が、使用されるかもしれないと。
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