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わずか半年くらいの間柄であるはずなのに、不思議な感覚だった。
いつの間に、彼らのことをそんなふうに感じるようになっていたのだろう。これが仲間というものなのだろうか。挨拶もなく終わってしまうというのも、申し訳ない気持ちになる。
まあ何にせよ、今はそんな感傷に浸っている場合でもなかった。これから、想像もつかないような苦しい苦しい、死の時間がやってくるのだ。
ただそれも、ユキといっしょなら乗り越えられるか――。
「ユキ」
いまだ暗い顔をした彼女を見る。
「もう最後だ。今までありがとう――」
ユキの手のひらを握る感触が心地いい。子どもの頃はよくあったことだが、こうして再会してからは、こんなふうにじっくりと触れ合ってはいなかった。
柔らかく、暖かい。とても女性的に手のひらだった。
ユキは無言で首をゆらゆらと振っている。もう顔を上げてくれることもないのだろうか。
ふと気づくと、背中がチリチリとしてきた。ちくちくと細い針で突かれているような感覚だ。
それは石の壁の材質のせいではなく、そこから伝わってくる熱のせいだとわかった。ついには石ですら、巨大なエネルギーによって加熱されてしまっているようだ。
そのうちに身体ごと溶かされてしまうのかもしれない。
強がってみたけどやっぱり、死ぬのは怖いな――。
けれどユキの前ではそんな弱音を吐きたくない。どうせ、最後に話すなら、もっと楽しいことを。ずっといえずにいたことを、伝えたい。
「ユキ……。俺はずっと、ユキが好きだった。うん……。たぶん――ロディの村にいた頃から、ずっと」
「ハンス……」
ようやく顔を上げてくれた。
「私も、そうです。――ずっと、ハンスが好き」
ユキの身体がもたれかかってきた。全身の力を抜いて、命運のすべてをハンスに預けてくれているような、心地よさがあった。
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