三章 『AL作戦』

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 わずか半年くらいの間柄であるはずなのに、不思議な感覚だった。  いつの間に、彼らのことをそんなふうに感じるようになっていたのだろう。これが仲間というものなのだろうか。挨拶もなく終わってしまうというのも、申し訳ない気持ちになる。  まあ何にせよ、今はそんな感傷に浸っている場合でもなかった。これから、想像もつかないような苦しい苦しい、死の時間がやってくるのだ。  ただそれも、ユキといっしょなら乗り越えられるか――。 「ユキ」  いまだ暗い顔をした彼女を見る。 「もう最後だ。今までありがとう――」  ユキの手のひらを握る感触が心地いい。子どもの頃はよくあったことだが、こうして再会してからは、こんなふうにじっくりと触れ合ってはいなかった。  柔らかく、暖かい。とても女性的に手のひらだった。  ユキは無言で首をゆらゆらと振っている。もう顔を上げてくれることもないのだろうか。  ふと気づくと、背中がチリチリとしてきた。ちくちくと細い針で突かれているような感覚だ。  それは石の壁の材質のせいではなく、そこから伝わってくる熱のせいだとわかった。ついには石ですら、巨大なエネルギーによって加熱されてしまっているようだ。  そのうちに身体ごと溶かされてしまうのかもしれない。  強がってみたけどやっぱり、死ぬのは怖いな――。  けれどユキの前ではそんな弱音を吐きたくない。どうせ、最後に話すなら、もっと楽しいことを。ずっといえずにいたことを、伝えたい。 「ユキ……。俺はずっと、ユキが好きだった。うん……。たぶん――ロディの村にいた頃から、ずっと」 「ハンス……」  ようやく顔を上げてくれた。 「私も、そうです。――ずっと、ハンスが好き」  ユキの身体がもたれかかってきた。全身の力を抜いて、命運のすべてをハンスに預けてくれているような、心地よさがあった。
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