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なのになぜ――こんなにも苦しいのだろう。胸の中に重いものがのしかかってくるのだろう――。
使われ方にも、その効果にも、何も問題はなかったのに。自分の意図する方法で、その力が行使されたはずなのに――。
それでも――味方のアルディス兵にも、少なからず被害者は出てしまったのだ。
そこで、携帯していた無線機が鳴った。
億劫に思いながらも、研究所の上司の可能性もあるので、無視するわけにはいかない。緩慢な動きで機械を操作した。
無線機の向こうから聞こえてきたのは、小うるさい上司のそれではなく、古くからよく知る友人の声だった。彼女をいわく、時間があるなら会いたいのだという。
まさに、救いの女神が手を差しのべてくれたのではないかと、そう思ったほどだった。
彼女と話をすれば、この複雑に歪んだ心が、多少なりとも修復されるのではないかと思えた。そうなることを期待して、彼女に今の居場所を伝えた。十分くらいでやってこれるらしい。
コーヒーを口に運びながら、彼女を待った。その時間がとてもとても長く感じられる。天井のスピーカーがなにやら放送をしていたが、その内容は頭には入ってこなかった。
そうなるとどうしても、研究のことを考えてしまう。魔法のことを考えてしまう。研究者の悪いところだろう。
究極魔法『ラグナロク』。
試作型とはいえ、それが発動されてしまった。この世界に対して、その力が公表されてしまった――。
今後、この結果をもって、世界はどのように動くのだろう。
アルディス軍は今後、この強大なる力を、いったいどのように使おうと考えているのだろう?
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