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「でも、そのアルデウトシティには、ブレイバーも派遣されているんだよね……?」
「それは……そうですわ。――でも、発動の十分前には確実に退避命令は伝わっていたはずですから、その段階での生存者は、間違いなく撤退できたはず――」
生存者は、だ――。
その事実もまた、シャーロットの精神を痛みつける。逆にいうなら、少なからず犠牲となった命もあるのだ。
計算上でも、半径三キロ以上、爆心地から離れる事ができれば、爆発の被害は受けないはずだった。ブレイバーともなれば、十分もあれば確実に退避できる。
もっとも、指示が出たその時点で消耗が激しかったブレイバーや、怪我をして動けなくなっていたブレイバーがいたとしたら、そのとおりではなかっただろう――。
ラグナロクの犠牲になったのは、おそらくそういったブレイバーだ。
アルディス軍の教えには、戦場では負傷者は切り捨てろ、とある。今回の事態もそれに当てはまるといえるが――心中穏やかでないことはたしかだった。
ずきりと頭が痛む――。
ぼんやりと思考が緩慢になる。
いけない、研究者がこれでは――。
魔法の運用に関しては、魔導省ではなく軍事省の管轄となる。だからシャーロットが気に病む必要は、本来ではないのだ。
それでもやはり、研究者として開発者の一人として、その魔法がどのように使用され、どのような結果をもたらしたかというのは、しっかり現実として受け止めるべきなのだと思う。
誰かに恨まれてしまうとしても、自分自身の仕事に誇りを持って、揺らぐことのない意思を持って、運命に立ち向かうべきなのだ。
「シャル? 大丈夫?」
「え? ええ……」
シャーロットは努めて笑顔を作った。
どうやら気が逸れていたらしい。
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