序章

2/18
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/310ページ
 顕暦八七四年、仲秋(ちゅうしゅう)の月、十三日――。  開戦から三十三日目。  クラッドストン学園、本館四階のフロアにある一室に、ユキはいた。  もう夜はすっかりと更け、そろそろ九時を回ろうかという時間だ。  この部屋では、つい先程まで、ブレイバーパラディンの一部による、緊急会議が行われていた。  アルディス軍本部の幹部らも出席し、今後展開していく作戦についての議論を交わしていた。  パラディン首席であるベルトラム、それからシェイラは、パラディンの有力者として会議に招かれていた。  ユキは彼らと隊を組んでいるという事情もあり、同席する運びとなった。要は鞄持ちのようなものだった。  今はその、後片づけを命じられているところだ。会議資料の処分と、飲み物の残骸を処理する必要がある。  資料の内容は極秘事項だ。外部に漏れることがないよう、跡の残らないように魔装具によって完全に消滅させるのだ。  すべての資料と、飲み物のカップを一ヶ所に集めたところで、そのうちの一つを、ユキは手に取った。 『首都防衛AL️作戦』――。  書類の冒頭にはそう、大きな文字で書かれている。次に発動される作戦の名称だ。  端的にいうなら、侵攻を強めるゼノビアを、アルディストン間際まで引きつけてから、返り討ちにする。そういう作戦だ。  単純なようだが、しかしこの作戦が持つ意味は非常に大きいといわざるを得ない。ここを突破されるようなことがあれば、アルディスの敗戦は確実だろう。  その防衛ラインとして設定されたのが、アルディストン近郊の大都市、『アルデウトシティ』だった。
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!