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「うーん、アルデウトシティか……。ハンスくんたちはどこに派遣されてるんだろう……」
ソフィが視線を宙にさ迷わせている。
彼女の――親友のソフィの心が、近ごろ同じブレイバーナイトに所属するのハンスに向けられているということを、シャーロットは薄々感づいていた。
とはいえソフィ本人から、正式にその想いを打ち明けられてはいない。
この身分違いの相手に、どれくらいの真剣さというか、関係を進展させようという意思がどのくらいあるのか、それはシャーロットにはわからないところだった。
もちろん、彼女が本気になるというのなら応援はするが、特別にけしかけたりはせずに、静観するつもりでシャーロットはいる。
貴族のしがらみもあることだし、簡単ではないのだ。
「ブレイバーの派遣状況はわたくしも知らないですわね……」
アルデウトシティにはどれくらいのブレイバーが配置されていたのだろう。そしてどのくらいの犠牲者が出たのだろう。
その中に知り合いがいたのかもしれない――。
たとえば、シャーロットが尊敬し慕っている、ミーアとか。
その表情が脳裏に浮かんだとたんに、ズキリと胸が痛んだ。
そんな想像はしたくもない。ミーアでなくとも、他の知り合いが赴いていた可能性もある。いまや死地となった戦場に。
その結果、命を落とした者は――いっそはっきりいってしまうと、確実にいる。現実は残酷だ。
魔研のため、アルディス軍のため、身を粉にして研究を続けてきた集大成にこんな仕打ちがあるなんて、とてもいたたまれない気持ちになる。
自分は正しかったのか?
それすら、疑いたくなる。
ラグナロクによって戦死したブレイバーの遺族は? いったい何を思うのだろう?
考えたくもないことだ。
逃げ出したくて、消えてしまいたいくらいだ――。
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