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「実は……明日の朝から、アルディス軍は今回の三つの戦地に、有志の偵察部隊を派遣することになってるの。わたしは治療要因の一人として、それに参加しようと思ってるんだけど――シャルもくる?」
「――現地、ですか」
しかも、有志か――。
ならば、今の立場でも、参加資格はある。理由を後づけすることもできる。
これは願ってもない機会かもしれない。
「そう。まず第一に、レジーナ様の無事が確認するように、軍からは指令が出てる」
「レジーナ様の帰還は――まだでしょうね」
試作型ラグナロクの使用が通達されたのが一時間ほど前のことだ。仮に彼女が無事で、そのままアルディスに帰還するとしたら、化神の力を持ってすればそろそろというところだろうが、まだ吉報は届いていない。
いや、おそらく、そう都合よくはいかない――。
『ラグナロク』は、攻撃を受ける側だけではなく――発動者に与える影響もまた、看過できないほど大きくなるはずだ。
「神徒様だから。きっと大丈夫だと思うけど」
「そうですわね……」
はたしてそうだろうか――。
しかも神徒レジーナは、研究者の一人として、ラグナロクの真の破壊力を熟知している。
あれはいわば、捨て身の魔法なのだ。
なぜならば、放った本人がその場から逃げることを許されず、爆発に巻き込まれてしまうからである。
だからこそ実は、発動できるできないの問題とは別に、禁術の使用は化神クラスに限定されている。それを理解したうえで、レジーナは『首都防衛AL作戦』への参戦を決めたのだ。
試作型『ラグナロク』の発動も、同時に決行されることとなった。試作型とはいえ、究極魔法の破壊力を検証するには、もっとも的確なタイミングであると、アルディスは判断したのだ。
まるでこの一連の流れは、神徒レジーナが思い描いた、彼女によってコントロールされた未来であるかのようにすら感じられる。
神徒にそのような能力があるのかどうかは、わからないところだが、しかしレジーナはこの結末を、未来を展望していたのかもしれない。
自分の運命とともに――。
なぜだかわからないが、嫌な予感は拭えない。
「とにかく、わたくしも上司にかけ合ってみますわ。許可が下りれば、わたくしもいっしょに行きます。――できることなら、アルデウトシティに」
試作型ラグナロクがもたらした結末を、ぜひともこの目で見てみたい。
たとえそれが、絶望的な映像として脳裏に焼きつくことになったとしても、研究者として開発者として、それを甘んじて受け入れる義務があると、シャーロットは思った。
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