四章 化神の力

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※※※  遠巻きに見たアルデウトシティは、一見したところ、取り立てて大きな変化がないようにすら見えた。  それもそのはずで、街を囲うようにして作られた外壁は、そのほとんどが無傷の状態で残っている。  それが遥か先の地平線を望むあたりまで、ぐるりと伸びているわけだが、遠くに見えるその端のほうですら、破壊されたり崩れたりというようすは見受けられなかった。 「こうして見ると案外、変わらないモンなんだなあ」  シャーロットの隣で、気だるそうな声を出したは、ミーアだ。  普段は持たない、肩かけ鞄を背負っているのは、この任務が戦闘を目的としたものではなく、調査と生存者の確認を主としているからだ。  彼女の持つ鞄の中には、医療道具や簡易的な食料、そして飲み水など、救援のための物資が納められている。  もちろん、同じような鞄を、シャーロットもソフィも、それぞれ一つずつ持たされている。この手の任務では基本のスタイルだ。  もちろん、不測の事態に備えて、ミーアとソフィは自分たちほ武器も携帯しているが、研究者の肩書きで派遣されたシャーロットは丸腰だった。 「ここで……ハンスくんたちは戦ったんだね」  ソフィは暗い顔をしていた。いやそれ以上に、今にも涙を流し始めるのではないかというくらい、悲壮感の漂う表情といってもよかった。  なぜ、ソフィがそんなふうに沈んでいるのかといえば、あれから一日経過した今もまだ、ハンスの生存が確認されていないからだ。  いや実は、それだけではなかった。  そのハンスの幼馴染らしい、ブレイバーパラディンのユキや、それからソフィの古い友人でもある、ルカもそうだ。彼らもまた、今のところ行方不明となっている。  そして――あの神徒レジーナも。
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