四章 化神の力

11/51

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/310ページ
「これだけ大きな街なら、一日くらいじゃ戻ってこれないってのもありえるよ。だからあんま、悲観的になるな」  ミーアはソフィの肩を軽く叩いた。  そのミーアの顔つきには、動揺の色はなかった。洗練されている。そんなミーアはやっぱり、シャーロットの憧れの的だった。  さすが御姉様、といいたかった。声に出して褒め称えたかった。けれど現状の空気が、そんな愉快なやり取りを求めていないことくらい、ちゃんとわかっている。  胸にくすぶる想いを抑えて、ミーアへの称賛は封印した。  とはいえシャーロットも、概ねミーアの考えに近いところがあった。  一日で戻らないからといって、イコール死へと結びつけるのは早計だ。怪我をしたり消耗したりして、動けなくなっている可能性だってある。だからこそ、この調査チームが必要なのだ。  くよくよしている場合ではないので、早々にアルデウトシティに足を踏み入れることにした。外壁の切れ目に建造されている門を通って、街の内部へと侵入した。  やはり外壁の付近の街並みは、建物もほとんど損傷もなく、綺麗なままだった。綺麗なまま、住んでいた人間だけが消えてしまっている街並みは、どこか異質な空気を放っていた。  さすがにこのあたりには、負傷したブレイバーや、命を落としたブレイバーの姿はなかった。戦場となっていたのは、もっと中心部に近い場所なのだろう。  そのまま、街の中心方向を目指して足を進めていく。  今朝早くの調査報告で、ゼノビアの自走兵器の残骸が発見されたことが発表されていた。  自走兵器『デアフリンガー』の成れの果てだ。  他の戦地では、残る二機『ザイドリッツ』と『インフレキシブル』の完全破壊も確認されている。どうやら、材料の一部にオリハルコンが使用されているため、アルディス軍は持ち帰って調査を始めるらしい。  そしてゼノビア軍のほうも、この敗戦を受けて、一時撤退を決めたようだ。  といっても、占領したアルディスのどこかの街まで後退して、潜伏していると思われる。そこで物資の到着を待ち、また攻撃を再開するつもりなのかもしれない。
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加