四章 化神の力

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 シャーロットたちは、半球の内部まで足を踏み入れた。すでに公式的な調査は済んでいるため、立ち入りが禁じられることはなかった。  半球の中心――つまりもっとも深くえぐられた部分の土はとても固かった。  それもそのはずで、本来ならば地中深くに隠されていた地層なのだ。それが露出してしまうほどのエネルギーを、試作型ラグナロクは発揮したということだ。 「すごいというのを通り越して、わたしはなんだか……こわいです」  ソフィはそういった。  こんな非日常を目の当たりにすれば、そう思うのも無理はない。 「――けど、これが、まだまだ続くよ」  あくまでも冷静沈着に、澄ました表情のままで、ミーアが答える。ソフィが絶望してしまいそうな、やるせないひと言で。 「そうですわね。アルディスはまだ、首都防衛戦に勝利したにすぎません。ここからゼノビアに攻め入るときには、今度こそ本当の究極魔法が使われるのかもしれません」  彼らを完全に制圧するには、それ相応の軍事力が必要なのだ。 「わかってるつもりだけど……それってやっぱり――こわいよね」  ソフィは遠目をした。 「たとえゼノビアの人だとしても、そうやってたくさんの命が奪われるのは、悲しいことです……」 「そういう気持ちがあるなら、なくさないほうがいいよ」  ミーアはいった。  その後には、あたしはもうなくしたけど、という言葉が続いているようだった。彼女はすでに、戦争というものを割り切っている。  直接聞いたことがあるわけではないが、そうなのだろうと思っている。 「ミーア御姉様は、どう思いますか? 戦争に禁術――究極魔法が使われることについて――」  別に何かを許されたり、認められたかったわけではない。ただ、本心から聞きたかった。ミーアの意見を。  大勢の命を一瞬で奪ってしまう、禁断の力をどう評価するのか、その関心は消えることなく湧き続けてくる。
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