四章 化神の力

18/51

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/310ページ
「どうかな……。でも、踏み込んではいけないところまで、人間の技術が到達しちゃってる感じはあるのかな。ゼノビアの兵器も、魔法もね」 「踏み込んではいけない――」 「ま、人道的な話さ。そもそも闘いって、身体と身体のぶつかり合いが始まりだったわけで。それがいつの間にか、人間の手にすら負えないような技術どうしが、相手を殺し合ってる」  心にずしりと重くのしかかる言葉だった。体術を生業とする、イーヴァイン人の血を持つからこその感覚なのかもしれない。  尊敬し敬愛するミーアからの言葉だからだろうか。まるで自分がやってきたことが間違いだったのではと、疑いかけてしまいそうなほどだ。  いや、そんなに簡単に折れるほど、弱い決意ではないのだけれど。  ミーアは続けた。 「もしこれが、アルディスでよくいわれる『ノアの意志』によるものだってんなら、ノアは人類を滅亡させたいのかな?」 『ノアの意志』。  アルディスではもっとも身近な教えであり、またある意味では、信仰対象でもある思想だ。  研究者であるシャーロットとしては、科学的根拠の乏しいオカルトは、特別に崇拝するほどではない。かといって、否定するつもりもない。拠り所は誰にだってある。  ただシャーロットの場合は、信じるべきは目に見えない神ではなく、自分自身なのだ。 「『ノアの意志』は、ノアの発展にもっとも近い選択をすると説かれています。ノアが人類を滅亡させたいなら、それがノアの発展に必要だということになりますね……」  ソフィはすらすらと言葉を紡いだ。このあたり、さすがは純粋なるアルディス貴族だ。  きっと幼少の頃から、さまざまな知識を教え込まれているのだろう。
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加