四章 化神の力

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「ふうん……。ま、そっか。たしか、この世の出来事全部が、『ノアの意志』のとおりに起こるって内容だったもんね。それじゃあ、人間に自由なんてないじゃんって話だけど」 「たしかにそういう解釈もできますけど……かといって、強制されているものでもないんですよ。川の水が上流から下流に向かって流れるように、あくまでも自然的なものなんです。強制ではなくて、必然というか――言葉にすると矛盾するようですが、必然的にそうなるんです」 「そうですね。哲学的、思想的なものですから。あまり深く考えるのは禁物ですわよ、御姉様」  実際、誰もが一度はぶつかる問題だろう。結果、すべてを知るのはノアであり、唯一ノアだけだという結論に行き着く。 「ああ、べつに、そんな気になってる訳じゃないよ。ちょっと腑に落ちなかっただけ。――それにしても、試作型でこれなら、正規品が実用化されたら、いったいどうなるんだろうな」  広がるだだっ広い大地を見つめながら、ミーアはいった。 「そうですわね。今のままでは、想定外の被害が発生する恐れがありますので、再調整をしなければなりませんわ。特に、今後のゼノビア侵攻に使われる可能性があるなら、なおさらです」 「使い方を間違えたら、あの『グランヴェル』でも、すぐに壊滅するかも」  ミーアは、敵国の首都を例に挙げた。  ゼノビアの首都グランヴェルは、アルディストンを三割増しにしたくらいの、世界第一の都市である。といっても、実際に訪れた経験は、シャーロットにはない。  まさか、首都に直接魔法を撃ち込もうなどという暴挙には、アルディス軍も出ないとは思うが――。
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