四章 化神の力

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 たしかにグランヴェルには、ゼノビア軍の総本山が居を構えているわけだが、しかしそれ以上に、戦争と関わりのない一般人が大勢生活しているのだ。  そこにこの『ラグナロク』を撃ち込むというのは――そんなことをシャーロットは望んでいない。それはもう、ただの殺戮行為だ。 「あのグランヴェルが……想像もつきませんね」  うまくイメージができないのか、ソフィは難しい顔をしている。 「そういえば、ソフィは行ったことがあるんでしたっけ?」 「うん。――といっても、もう十年以上前だけど。小さかったから記憶が曖昧になってるけど、とにかく建物が大きかったのは覚えてる」  時代背景を考えるなら、おそらく開戦の直前といったところで間違いなさそうだ。  三大国家による大戦が勃発したのが十二年前なので、当時のソフィは四歳か五歳だったと考えると、時間的な辻褄は合う。 「ま、究極魔法はないとしても、そこを攻め落とすとなると、結局は神徒様の力を借りることになるんだろ? ――その彼女はまだ見つかってないみたいだね」  シャーロットは沈黙した。ソフィも無言だった。  今も魔導無線機を携帯しているが、いまだレジーナ発見の吉報は入っていない。  最後に彼女の存在が確認されたはずの、あの試作型ラグナロク発動の時間から、すでに一日以上が経過している。それでもなお、影も形も見つからないということは、最悪の自体を想定せざるを得ない状況だった。  しかし、それを安易に口にすることは憚られる。  何となく、不謹慎というのか、目上の人間に対しての無礼だと思えたからだ。悪いことほど、口にすると実際に起きてしまうような、そんな気がするからだ。  それこそオカルトで、何の根拠もないのだけれど――。
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