四章 化神の力

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「でも、仮にレジーナ様が戦死したとなると――それはそれで少しプランが崩れるよな」 「ミ、ミーアさん……」  ソフィの顔が一瞬にして真っ青になった。あたりをキョロキョロと見渡している。  心配せずとも、ここにはシャーロットとたち三人しかいない。だから、今の発言が、アルディス軍の上層部の人間に届くことはないだろう。  やはりレジーナの死の可能性を口にすることは、ソフィの中でもタブーとしていたようだ。貴族なら、なおさらか。 「事実をいっただけだよ。そんなに周りに気を使う必要ないって」  あっけらかんとしている。この図太さもミーアならではだ。  それはいいとして、と前置きして、ミーアは続ける。 「たしか三大国家の協定があったはずだよね。化神が国家の戦争行為によって生命を落としたときは――」 「如何なる理由があろうとも強制的に六ヶ月間の休戦となる、ですね」  ソフィが引き継ぐ。 「『三国臨時不可侵協定』です」  つまり、神徒レジーナの死が確認されたなら、その正式な発表日から半年間は強制的に休戦期間となるのだ。これはミーアのいうように、三大国家間に古くから存在している協定の一つだった。  なぜ半年なのかといえば、次の化神の候補を立てるための期間として、それだけの日数が定められている。  化神は国家における、最重要人物の一人として扱われる。つまりは国王や国の当主が亡くなったときにすぐに代わりの人間が任命されるように、化神もまた、常にその席を埋め続けることが求められている。  また、化神の喪失は、国家の軍事力の衰退に直結する。化神が不在状態の国に対し、化神を用いた戦争を行うことは、軍事力のない相手を一方的に侵略する行為と同等とみなされるため、そういった状況が起こり得ないよう、協定が結ばれているのだ。  だから実質は、次期化神を任命するための半年間というわけだ。
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