四章 化神の力

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「けど、その立派なベルトラム首席も、どうやら行方不明みたいだけど」 「そうなんですか……?」  それは初耳だった。パラディンの首席ですら、無事ではないということか。  まさか彼のことだから、戦死したということはないだろうが――。 「ベルトラムさんだけじゃないです。――ほかにもたくさん……」  ソフィは唇を固く締めた。  おそらくソフィの脳裏に浮かんでいる、そのたくさんの行方不明者の中で、彼女がもっとも身を案じているはずの一人に、シャーロットは心当たりがある。  これまでソフィは気丈に振る舞っていたが、やはり心中では気が気でなかったに違いない。  こうして有志の部隊に自ら加わったのは、実はそれが一番の理由なのかもしれない。自分の目で、彼の生死を確認したかったのだろう。  彼もまた、このアルデウトシティ戦線に投入されていたうちの一人だ。  戦地に赴く前に、魔研の休憩所で話したときの彼――ハンスの表情が思い出された。  彼はどちらかといえば、食えないタイプの人間だ。ひねていて、本心が読めない。  年齢よりも大人びてしまうのは、厳しい世界を生きるブレイバーに総じて当てはまることではあるが、シャーロットが持つハンスへの印象は、そんなところだ。  けれど、普段から関わりの多いソフィにとっては、また違う彼が見えているのだろう。想いを抱くほどの魅力的な何かがあるのだ。  なんにせよ、上流貴族のソフィに心配をかけさせるだなんて、本当に困った男子である。 「ハンスさんもルカさんも、きっと無事でいますわよ」  いいながら、とても無責任な発言をしているなと、シャーロットは反省をした。あまり楽観的な期待を持たせるべきではないか。
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