四章 化神の力

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「……そう信じるしかないです。それにユキさんも……見つからないだなんて……」  ソフィは自分自身のライバルになりえる女の子の名をあげた。  ブレイバーパラディンのユキとは面識はないが、その実力は魔研にももちろん轟いている。  彼女とハンスは、同じ村で育ったという幼馴染の仲らしい。それだけでもう、ソフィは最初からハンディキャップを抱えているのだ。 「ああ、そういえば幼馴染ちゃんもだったっけ……」  そういったミーアの口調が、わずかに暗くなっていたことに、シャーロットは気がついた。  二人は知り合いだったのだろうか。 「それに、その上司の彼女と――ほんと、いなくなったら大変なメンツだな」  幼馴染ちゃん、というのは十中八九、ユキのことだとして、その上司の彼女というのは、パラディンナンバー2の呼び声高いシェイラのことだろう。  彼女はこのアルデウトシティで、レジーナが戦闘する直前に、しんがりとしてアルディス軍の撤退を補助する任務に当たっていたようだ。  シェイラほどの実力者なら、その後自らが撤退することも時間的には十分可能だったはずなのだが――現状ではシェイラも、行方不明となっている。  というのも、時間的に余裕があったのは、試作型ラグナロクの効果範囲が三キロメートルだった場合での仮定だ。  実際はそれが五キロメートルまで延びている。となると、ラグナロクの爆発に巻き込まれた可能性も否定はできない。  そうだった場合は、もしかすると――。  そう考えたとき、まだ頭の右上のほうに、ずきりと鋭い痛みが走った。  あの試算のミスによって、失われたかもしれない戦力が、命があるのだ。それも、たくさん。  遺体が見つかっていないのが、せめてもの救いかもしれない。僅かな生の可能性を信じることができるからだ。
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