四章 化神の力

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 一人で何もかも決断しなければならなかった孤児のミーアと、一族のしがらみから逃れられないソフィと、運命的にも両極にいる二人の心中は、どちらもシャーロットなりに慮ることはできる。  だからミーアの心情も理解できたが、それよりもここは親友に助け船を出すべきだろう。 「まあまあ、御姉様。――ここがおそらく爆心地だということはわかりましたので、調査に戻りましょう。次は神徒レジーナ様の捜索ですわ」  少し強引すぎただろうか。  けれどシャーロットとしても、そろそろ本題に戻りたいところだったのだ。 「ん? ――ああ……そうだね」  毒気を抜かれたように、ミーアは気のない返事をした。ミーアには申し訳ないが、今はこれでよかったはずだ。  神徒レジーナをはじめとして、パラディン首席のベルトラム以下、シェイラ、ユキ、そしてハンスにルカ、その他大勢――生死がはっきりしていない者がたくさんいる。  ミーアのいうように、アルディス軍の戦力様相は、ここにきて大きく変わりはじめているのかもしれない。  これが究極魔法の代償なのだろうか?  久々の勝利の余韻すら吹き飛ぶような、大きな痛手がアルディス軍にのしかかっている。  化神といえばもう一人――魔卿ジェルドが控えているが、まさか彼も参戦ということになるのだろうか。  現状、究極魔法ラグナロクは、化神の二人が使用することを目的として開発されているものだ。なので仮に――あくまでも仮の話だが、神徒レジーナが命を落としていたなら、ラグナロクを行使できるのはジェルドだけということになる。  もしそのときに、今回のような試算間違いが起こったとしたら――。  その未来を想像したたけで、シャーロットは喉の奥が詰まったように、息苦しくなってきた。呼吸が乱れる。  と、そこで、ミーアが携帯している魔導無線機から、無機質な機械音が鳴り始めた。着信を知らせる合図だ。  ポケットから無線機を取り出して、ミーアが応答する。  相手の指示に対して、定期的に相槌を打っている。 「――はい、では向かいます。――通信終わり」  最後にそういって、ミーアは通信を遮断した。どうやら次の指令が出たらしい。 「何ですか……?」 「ここから五百メートルくらい離れたところに、ちょっとおかしなポイントがあるらしい。そこに行ってくれって」
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