一章 未完の新兵器

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 さて、そんな国家の危機の最中に、冒頭の事件は起こったのだ。  神徒レジーナ参戦の公式発表を、まさに翌日に控えたその日だった。  端的にいうと、クラッドストン学園に、外部からの謎の侵入者が現れたのだ。  目撃者の証言によれば、その侵入者は二人組であり、その両方が頭をすっぽりと覆うような仮面を被っていたというのだ。  仮面を被った人物と聞くと、否が応でも、ある一つの組織と、そして目的が浮かび上がってくる。そう、世界に七つあるとされる、神器の収集だ。  神器を狙う仮面の人物は過去に二度と現れた。  一度目はハンスの実戦演習の任務中、カルテノという街に隣接する森の中だった。そのときは、ユキが当時所持していたヒメツルが奪取された。  そして二度目は、仲夏の月末――祝賀祭の最中でのことだった。  ここでは、黒曜という名の神器が狙われたのだが、事前に情報を入手していたアルディス側が、黒曜をレプリカとすり替えていたことで、事なきを得ることができた。  だが、どちらのケースでも、仮面の人物はブレイバーパラディンクラス――いやそれを上回るほどの実力を見せつけており、軍は警戒を強めていた。  このように、アルディスの神器は、これまで何度も狙われてきた。  そして、今回の侵入者の正体も、やはり同じだった。ヤツらの狙いは神器だったのだ。  クラッドストン学園本館を襲撃したという仮面の二人組は、神器が格納されているとされる五階に侵入した。  どうやらそこが、神器『黒曜』の安置されている場所だったらしいのだ。
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