四章 化神の力

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 が、不思議なのは、その反対側にあったはずの建物の外壁だ。  そっちの外壁だけはなぜだか、およそ五メートル程度の高さまでは、崩壊することなく残っているのだ。  しかもその形が、まるで人工的に切り出したかのように、半円形に近いような縁取りをしている。  さながら、半分に割れた丸いコインをそのまま大きくしたモニュメントが建てられているかのような、そんな姿なのである。  百歩譲って、丸い形状を作り上げたのはたまたまだったとしても、やはりここだけ五メートル近い高さまで被害を逃れたというのは、なかなか理解の追いつかない事象だった。  周りを見渡してみても、微妙な個体差はあれど、五メートルもの高さまで破壊を逃れた建物はなかった。  つまりここだけが、何らかの影響によってラグナロクの放出する爆発的なエネルギーを免れたということになる。  その原因となったのは、いったいなんなのだろう。 「おかしいといえば」  と、口を開いたのはソフィだった。  他の全員が、高々と残された外壁に目を奪われていた中、ソフィは荒れた大地をを見つめていた。 「この地面の砂もそうですね」  ソフィの示すままに、シャーロットは視線を落とした。じっと眺めているうちに、ソフィのいわんとするところが見えてきた。  それはだいたい、半径三メートルくらいの範囲だろうか、その範囲だけ、綺麗な円形を描くようにして、他所とは質の違う土壌が残っている。  具体的にいうならば、爆風によって表面の土が吹き飛ばされることなく、そのまま残されているのだ。  色合いが微妙に違っている。たぶん触れてみると、固さなどの違いもわかるだろう。  それが半径三メートルの面積だけに広がっている――。
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