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「まるでこの空間だけ、何らかの理由で爆発を逃れたかのようですわね……」
ポツリとそんな言葉が口をついた。五メートルの壁にしろ、非現実的だとわかっていても、それくらいしか思い当たるところがないのだ。
「案外、それが正解なんじゃない?」
軽い口調でその説を肯定したのはミーアだった。ミーアはそのまま、巨大なコインの形に切り取られた外壁を見上げた。
「それならこの壁も説明がつくじゃん? 要するに、この半径三、四メートルくらいの球体の空間だけ、なぜだかラグナロクの影響を受けなかったってわけ」
「たしかにそれなら辻褄は合いますが――そんな現象は……物理的にありえませんわ!」
思わず声が大きくなってしまった。
そんな――たとえるならバリアのような都合のいい魔法は存在しない。
いや――正確にはないわけではないのだが、それでもその魔法のレベルは良くてもレベル2か3だ。
究極魔法とすら称されるラグナロクの放つエネルギーを、その程度の魔法でここまで完璧に防げるわけがないのだ。その前に確実に剥がされてしまう。
「じゃあ、ゼノビアの兵器か何かの仕業かな? もうそれくらいしか思いつかないぜ」
ジュリオは肩を竦めた。
ゼノビアの兵器について、シャーロットはすべてを知るわけではないので、この問いに対しては、可能性はゼロではないとしかいえない。
「でも、試作型とはいえ、ラグナロクのエネルギーを防ぎきるなんて、やっぱり考えれませんわ……」
そうだ――。
そもそもゼノビアがそんな最先端の技術を開発していたなら、それを自走兵器に搭載しないのは不可解だ。
仮にそんな兵器があって自走兵器に積まれていたなら、この戦いに負けることはなかった。そんなヘマを彼らが犯すとは思えない。
たぶん、一連の出来事は、ゼノビアの仕業ではないのだ――。
ゼノビアと、関係のないところで起こっている。ほとんど直感的にだが、そう思った。
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