四章 化神の力

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「これだけ死傷者が増えたんだ、ブレイバー組織の改編もありそうだよなあ……」  ぽりぽりと頬を掻く、ジュリオ。 「もしかすると、あんたがパラディンに昇格したりしてね」  ミーアがジュリオをからかうようにいう。 「パラディン? さすがに勘弁してくれ。それはないよ。まだ今は――な」  唐突にジュリオは表情を真面目なものに変えた。 「今のままパラディンなんかになったら、兄貴に申し訳がたたないぜ」 「……ふうん、そうなんだ」  適当に相槌をしたようで、ミーアはどこか満足げにも見えた。相手を認めて尊重するような、小気味のいい微笑を作っている。  そこでまた、無線機が着信の合図を鳴らした。ミーアとジュリオが携帯していたそれぞれが同時にだった。どうやら調査に参加している全員に対しての連絡らしい。 「僕が出よう。スピーカーにするよ」  ジュリオはいった。スピーカー機能を使えば、持ち主だけでなく全員に届くほどの音量になる。 「こちら、アルディス軍本部。調査に参加中のブレイバーすべてに告ぐ。心して聞くように……」  それは何ともあらたまった前置きだった。声だけではあるが、それでもその奥にある緊張感がしっかりと伝わってきた。  嫌な予感がした――。 「神徒レジーナ様の――」  しばしの沈黙。そして――。 「戦死が確認されました――」  その、もっとも残酷な結末が、通達された。  ある程度、予想できていたことなので、ショックや落胆や悲しみといった、負の感情は最低限に抑えられた。それでも、一縷の望みが断ち切られた衝撃は少なからずあった。  化神が命を落としたという意味は大きい。  これでアルディスだけではなく、世界は少なからず今後の方針の転換を求められることとなる。 『三国臨時不可侵協定』によって、世界は六ヶ月間の休戦期間に入るのだ。  さらに――無線機の向こうの男は言葉を続けた。 「それから、行方不明者のうちからブレイバー二名、生存が確認されました――」
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