四章 化神の力

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※※※  目が覚めたとき、そこがこれまでにいたはずの場所ではないということは、その場の雰囲気からすぐに察知できた。  まず、屋外ではない。  身体を刺すように降り注いでいた日光がなく、熱さも感じられない。  どこかの建物の中にいる。眼前に広がっている光景が屋外のそれではなく、人工的な物体であるということは、つまりそういうことだ。  壁面だろうか。それが目測でもずいぶんと遠い位置にある。  いや――違う。  自分の身体が今、地面に対して平行になっている――つまり寝かされているのだということに、ハンスは気づいた。ということは、目の前にあるのは建物の天井ということになるだろう。  ずいぶんと高い位置にある。どれくらいだろう。五メートル以上あるかもしれない。とりあえず、大きな建物のようだ。  ハンスはゆっくりと、掌を動かしてみた。大丈夫だ、問題なく動く。次に慎重に身体を起こしてみた。それも滞り進んだ。  そしてようやく、付近のようすがわかった。  ここは教会のような場所だった。長椅子が均等な間隔を保って並んでいる。とうやらハンスは、その長椅子の最前列に近い部分、つまりは崇めるべき像が安置されている側に寝かされていたようだ。 「気がつきましたか」  後ろのほうから声がした。ハンスは飛び退くように振り返った。 「あ、あなたは……」  目に飛び込んできた光景の、そのあまりの衝撃に、言葉を失ったほどだ。あの彼女が――神に選ばれた彼女が――神徒レジーナが、目の前にいたのだ。 「お久しぶりですね」  そして、彼女が腰を下ろすそのすぐ横には、ユキが寝かされているのがわかった。  ハンスとユキの身体に挟まれるようにして、レジーナは座っている。
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