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ユキも――無事……なのか?
「ここはいったい……?」
たしか――ついさっきまで、戦場で戦っていたはずなのだ。アルデウトシティに攻勢をかけ、ゼノビア軍の兵士である男と一戦を交えて、それから――。
「質問にお答えしたいところですが、実は今、一刻を争う状態です」
厳しい口調でそう告げて、レジーナは横たわるユキに視線を落とした。一刻を争う、というのはまさか、ユキのことか。
「足の重傷に加えて、ラグナロクのダメージも受けたようです。私は治療従事者ではありませんが、命の危険が伴っていることはたしかです」
「命の……」
まさかそこまでだったのか?
ハンスはすぐに、ユキの隣まで移動した。
ユキは目を閉じた状態で、荒い吐息を漏らしていた。どうやら、かろうじて意識はあるようだ。しかし苦しそうなことに変わりはない。
こちらにも気づいていないようだ。
「ユキ! 大丈夫か!」
ハンスは呼びかけた。
すると、ユキのまぶたがわずかに開く。その細い隙間の中で、黒い瞳がハンスのほうへとゆっくりと動いた。
「ハン……ス……」
消えかけそうな声だった。ユキの左手が何かを探すように動く。
ハンスはその掌を握った。ユキも弱い力ながら、握り返そうとしていることはわかった。しかし、それがすでに、通常ではないことは一目瞭然だった。掌を握るだけの力すら危ういという状態なのだ。
「ユキは――助かるんですか?」
レジーナは、否定も肯定もなく、ただ一点を見つめたまま、無言だった。首を縦にも横にも振らない。
やがて、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
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