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「あなたは――それを望みますか? 彼女の命が助かることを」
意味深にレジーナは語ったが、何のことはない、そんなのは当たり前だ。親しい人間が瀕死の状態で目の前にいて、助かるか助からないかの二卓を選べといわれれば、誰だって助かるほうを選ぶ。
もはや、選ぶという感覚ですらない。
無条件でそう決めるだろう。
無条件、で――?
「いうまでもありません。お願いします!」
答えながら、思う。
仮に無条件なら、わざわざ選択肢を設けるだろうか?
「……当然、そうでしょうね」
相変わらず、こんな状況にもかかわらず、レジーナはとても落ち着いた雰囲気で、実際にとても冷静に一つ一つの言葉を発している。
神徒に対して無礼とわかっていながらも、少しばかり苛立ちを覚えてしまうほどに。
「ただ、私自身にも、実はそれほどの生命力は残っていません。先の戦いで発動した試作型のラグナロク――想像を越える巨大なエネルギーを発生させました。ある程度、予測していた事態とはいえ、アルディスの魔法技術がここまで進歩しているというのは、化神の一人としては誇らしい限りです」
感慨深げにいう。
そうなのだ。先ほどから、あえて気にかけないようにしていたのだが、レジーナのほうも、軍服はすでにボロボロの状態なのだった。
神徒のために作られた特注品と思われる白の軍服が、いたるところで解れて、破れて、燃え落ちている。白い肌が露出している部分もある。
そのうえ、身体や顔はあちこちが汚れて、しかも生傷がいくつもできていた。
神徒という神聖なる響きと優雅さを忘れてしまうくらいに、今のレジーナはひどく痛んでいる。
それにしても――生命力とはどういうことだ?
単純に考えてしまうなら、それは命と同義かと思われる。
つまりレジーナも、生死に関わるほどのダメージを負ってしまっているということか――。
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