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「レジーナ様は……大丈夫なんですか……」
するとレジーナは微笑んだ。まるでここが平和な箱庭であるかのように、とても優雅に。この状況を思わず忘れてしまいそうにすらなる。
「私は大丈夫ですよ。いついかなるときも。化神はけっして揺るぎません。女神アイリスが、私にその力を与えてくれました。――もっとも、肉体の終わりは刻一刻と近づいていますが、それ自体は私にとっては、とても小さなことなのです」
何事もないことのように話しているが、それは聞き捨てならない。
「肉体の終わりって……それは死ぬってことなんじゃ……」
「死、ですか……。たしかにいい換えればそういうことになるでしょうね。いくら化神とはいえ、女神アイリスの力と魂を宿しているとはいえ、肉体を失ってしまえば人間としての活動はできなくなりますからね。――いえ、化神である私のことを『人間』と評してもいいのか、それはわかりませんが」
妙に哲学的なことをいっているが、議題を逸らされてしまったようで、掴みどころがなかった。
ただ一つ、レジーナは自分の死を受け入れて、その瞬間が来ることを悟っているようにすら思えた。
「死が怖くはないのですか……?」
あまりにも話が回りくどいので、質問の方向を変えた。神徒様を相手に質問ばかりするのも、少し恐縮してしまうが。
「わかっていたことですから。私はこの戦いで、人間としての肉体を失うと、すでに決まっていたのです。本来なら、ラグナロクを放ったあのときにあの場所で、私は肉体の終わりを待つはずでした。けれど――そんなときに、あの爆発を受けてなお、命を取りとめたあなたたちの存在に気づいたのです」
レジーナがこちらを見る。すべてを見透かしたかのような瞳で。
「あの力を、使いましたね?」
「……」
そのとおりだ。でなければ、ハンスもユキも、あの常識はずれの爆発の中で、助かることは絶対になかったといってもいい。
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