12人が本棚に入れています
本棚に追加
/310ページ
「――それでレジーナ様が、俺たちをここまで運んでくれたわけですか」
「そうです。それに神徒として、助かるはずの命を私は見逃しはしません。私はどちらにせよ、終わりを待っているだけの身……。最後にもし――あなたがたを救うために、私のこの力を使うことを求められるなら――いえ、求められずとも、少なくともその選択肢を提示することが、私の化神としての最後の義務――」
そういってレジーナは、ユキの手のひらを取った。
そしてハンスではなく、いまだ荒い呼吸を続けながら、険しい表情のまま目を閉じているユキに向かって、こういった。
「さあ、選びなさい。パラディン、ユキ。――あなたは私の啓示を受け入れてもなお、この世界に生きることを望みますか?」
啓示――?
すると、ユキの手を握るレジーナの手が、ぼんやりとした光を放ち始めた。
そして、まるでそれに呼応するかのようにして、ユキはうっすらとまぶたを開いた。ユキの視界の中には、そのぼんやりとした光が映っているはずだった。
「今、あなたも理解できたはずです……。私がこれから、何をしようとしているのか――」
レジーナの声が届いているのか、それはわからなかった。彼女の言葉に対する反応を返すことがなかったからだ。それはいい換えれば、その力さえも残っていないのかもしれない。
それからユキの視線は、ハンスのほうへと移動した。まるで瞳で何かを訴えるかのように――。
ユキが何を伝えようとしているのか、それを瞬時に読み解くことはできなかった。
それを理解する以上に、ハンスは自分の中にある、押さえきれない激情を、ユキに伝えることを優先した。
「ユキ、頼む! 生きてくれ!」
誰かに対して、ここまで強く求めて願うことは、今後もないのではないかと思うほどに。
「誰のためでもなく、俺のために! 生きるための理由が必要ならそれでいい! 戦うことが辛いなら、これからは俺が、ユキを絶対に守る! たとえユキがどんなに変わろうと、俺は絶対にユキの味方だ!」
ユキはわずかに、笑ったような気がした。そして視線を、レジーナへと移した。
最初のコメントを投稿しよう!