一章 未完の新兵器

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 この階は、学園や軍の幹部らが出入りするフロアだ。ちなみに、その上の六階には化神の住居があり、そして最上階には、クラッドストン学園長が控えている。  仮面の侵入者の排除には、学園内に残っていたブレイバーが対応したらしい。だが、いかんせん戦争中であるがため、現在の学園は大した戦力を有していなかった。  きたる参戦のため、レジーナはすでに学園から出発していたようで、もう一人の化神であるジェルドも、アルディス軍本部に滞在しているタイミングだった。  そう、まるで図ったかのような奇襲だったのだ。  まさか情報が漏洩していたとでもいうのだろうか――。  それについては、公式的な発表は行われていない。  不審な点はもう一つある。  本館の上層階というのは、幹部たちが持つとされるとされる特別なカードキーのようなものがなければ、そもそも立ち入ることすらできない。にも関わらず、彼らはそこを突破した。  どうやらアルディス軍の中には、侵入を手引きした人物がいたのではないか、という憶測すら流れているようだが、定かではない。  例えば、屋上から降りてくるだとか、力ずくでの侵入ルートがまるでないわけではないのだ。  実際、五階のフロアはかなり派手に破壊され、最後は窓から外部に逃れられているので、侵入の痕跡は残っていなかったようだ。  とにもかくにも、仮面の二人に対抗しうる戦力が軒並み不在だったこともあって、被害は想像以上に大きなものとなった。  ブレイバーだけでも、数人の死者を出してしまっている。それだけでなく、学園幹部の幾人かも、その死者リストに名前が刻まれることとなった。  これまで、仮面の組織が人間を殺めた実績はなかったが、こうなるともう、彼らを看過することはできなくなる。  そして――結末として、神器『黒曜』は奪われてしまった。
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