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何を語るでもなく、動作で何かを示すでもなく、レジーナとユキは互いの視線を数秒間合わせていた。
やがてレジーナが口を開く。
「パラディン、ユキ。あなたの決断に敬意を評します。アルディスを守る偉大なるパラディン、ユキ。これからも私に代わって、どうかアルディスを守り続けてください……」
レジーナはすぐに、ハンスを見た。
「さあ、ハンス。助力をお願いします。まずは彼女の足の修復から行います」
「足――?」
それよりもまずは、生命の危機から救うべきなのでは、とハンスは思ったが、レジーナがそんな初歩的な間違いを犯すとは思えない。ここは素直に従うべきだ。
「そんなに悪いんですか?」
「おそらく、通常の治療魔法クラスでは後遺症が残るでしょう」
そこまでだったのか。捻った程度のものなのかと思っていた。
「ラグナロクの衝撃を受けた影響もあります。そもそも、彼女だけが瀕死のダメージを受けたのは、あなたの例の能力の影響が、使用者本人であるあなた自身ほど、彼女には効果的に発揮されなかったからです」
そういわれればそうだ。ハンスのほうは、今となってはほとんどかすり傷程度の痛みしかない。
なのにユキがここまでダメージを負ってしまったのは、魔法無力化がユキにまでうまく働かなかったのだろう。あの瞬時の判断では、そこまで精密にコントロールしきれなかったのかもしれない。
まだ未熟なのだ。自分自身が。
「彼女のブーツを脱がしていただけますか? 治療に最大限の効果を与えるためにベストを尽くしましょう。……私は再生の準備を整えます」
治療ではなく、再生なのか――。
しかしそんなことを気にしている場合ではない。
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