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レジーナが儀式といった意味が、そこでようやく、わかった気がした。
ハンスの想像している通り――レジーナがユキに生命を受け渡そうとしているのなら、それはこの世でもっとも荘厳なる儀式といっていい。
「覚悟はできましたか、パラディン、ユキ。――といっても、もう答えを待っている時間はありませんが」
レジーナが問う。
ユキはまた、まぶたを少しだけ開けて、レジーナを見た。そして、ハンスと繋がれた掌にわずかな力を込めた。もう握るとすらいえないくらい弱い力だ。
ユキは相当に衰弱している――。
もうなりふり構わず、さっさと儀式を開始して欲しい気持ちがふつふつ沸き立ってきて、大きな声をあげてしまいそうなくらいだった。
何でもいいから早く、ユキを助けてくれ――。
「お……」
ユキが唇を動かしたとわかるまでに、少しの時間を要した。もはや動いているかどうかもわからないくらいだ。
ハンスは無意識のうちに、ユキの言葉に耳を傾けるために顔を近づけていた。
「お願い……します……レジーナ……さま……」
かすれたような、囁くようなこの声が、レジーナまで届いているのかはわからない。
けれど、彼女のことだ。人智を越えた何かで、ユキの意志を受け取っているのかもしれない。
『ノアの意志』ではなく、ユキの意志による決断を。
「私は……あなたの……すべてを受け入れて…………生きます……」
その瞬間に、レジーナの身体が、まばゆい光を帯びた――。
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