四章 化神の力

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※※※  次に気がついたとき、ハンスの目の前には、変わらず床に横たわるユキの姿があった。  いったい何が起こったのか、すぐには理解が追いつかなかった。レジーナが光に包まれた、あの瞬間から先の記憶が、ぽっかりと抜け落ちてしまっていたからだ。  これもまた、神徒がもたらす神秘的な力の影響だったのだろうか。  しかし、一つの大きな変化があったことで、儀式はすでに次の段階に進んでいる――またはすでに終了しているということが、比較的容易に予想できた。  神徒レジーナが――教会の床に、仰向けに横たわっていたのだ――。  瞳を閉じて、まるで眠っているようだった。  ユキの身体に対して直交するように横たわっているのは、おそらく儀式を終えたあとに、そのまま後ろに倒れてしまったからだろうと思われた。  ただその瞬間をハンスは確認していない。たしかあのとき、突然レジーナの身体が発光したかと思ったその後には、もうハンスは意識を飛ばしていたのだと思う。  結局のところ、何が起こったというのだろうか。   ユキもまた、意識を失っている。とても静かに。眠っている。  いや、本当に眠っているのか?  本当に眠っているだけなのか?  ハンスは咄嗟に、握ったままになっていたユキの腕を持ち上げた。それからゆっくりと、人差し指を内側の手首にあてがった。指先に神経を集中させる。  しばらくして、指先は命の脈動を捉えた。そのとたんに、ハンスの身体中から力が一気に抜けていった。 「生きてる……」  いや、だがまだわからない。一命は取り止めているが、ユキの容態が回復しているのかはわからない。 「――ユキ! ユキ!」  ハンスはユキの身体を軽く揺すった。ダメージの後遺症があるかもしれないので、無理なことはできない。
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