四章 化神の力

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「本当はどうだったんだろうな……」  思わず口をついていた。 「えっ?」 「レジーナ様は自分の死期がわかっているといった。それがこの戦いなんだって。だからその前に、自分を犠牲にしてユキを助けるといった」 「うん……」 「それは本当だったのかな? もしかすると――」  まさか、本来なら助かるはずだった自分の命を捨てて、ユキを助けようとしたのか?  真相はわからない。そうすることを選んだ理由も。目的も。今は亡きレジーナの中にしか、その答えはない。  そしてそれをユキの前で口にすることも、やはりハンスにはできないことだった。  すべてはレジーナが決断したことだ。いや、レジーナがユキに問い、ユキが決断をして得た未来だ。  ハンスにできることは、その二人の選んだ未来を尊重し、敬意を示すことくらいだろう。 「レジーナ様は、私に託したんだよ……」  と、ユキは神妙な面持ちでいった。 「託した?」 「私にはわかる。レジーナ様は停滞していた時代を動かそうとした。それを私――私たち次世代のブレイバーに託した……」  「次世代、か」  直接レジーナの力に触れ、そして蘇ったユキがそういうなら、そうなのかもしれない。  魔力やマナの性質上、魔法使いのピークはせいぜい二十代までとされている。だからアルディス軍の実力者には、必然的に若い世代が多いのだ。  レジーナは年齢不詳だが、少なくとも十数年もの間、神徒に君臨し続けてきたはずだ。  こうして参戦を決めたのも、アルディスの行く末を悟ったからだったのかもしれない――。  すべては憶測でしかないが。
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